左前輪大破。フロントバンパー脱落。グリルガード切断。
無惨な姿になってしまった3代目デリカをただ呆然と眺めていた…。
平成22年7月14日。6時30分のことだった…。

 いつも通りの出勤。梅雨明け間近のこの日、夏を思わせる日差し
が早朝から照りつけるものの、時折さーっとシャワーのような雨が
通り過ぎていた。空には完全な半円形を描く虹が現れ、近づく夏を
鮮やかに演出していた。
 車は細い一本道にさしかかる。ゆるやかなカーブが右から左へと
続くその道は幅が車1台分しかなく、数カ所にすれ違いポイントがあ
る。左手は森だが右手は畠なので見通しは利く。ダンプ基地や清掃
工場が近辺にあるので、大きな車もよくその道を利用していたが
皆上手に対向車を避けて通行していた。
 その日も自分は、200mほど先に対向車がいないことを確認して
その道に進入した。思いがけず朝の虹を見られて気分が高揚して
いたのかもしれない。やや速度が出ていた。右手の畠に立ち木が
数本立っており、デリカの高い視点からでも数秒視界が遮られる
場所がある。が、対向車がいないことを確認していたのでいつも
通り気にせずその場所を通過した。思えばその「いつも通り」が油断
だったのかもしれない。どんなときでも不測の事態が起こりうることを
心のほんの片隅にでも持っていなければならない、ということを数秒
後に思い知ることになる。
 立ち木に遮られていた視界が開けたその時、目前にシルバーの
乗用車が突如現れた!ハンドルを切る。ブレーキを踏む。しかし無情
にも先ほど美しい虹を見せた雨がデリカの制動を妨げる。勢いが失わ
れないまま左前方をガードレールに激突させ、デリカは止まった。
幸い正面衝突は避けられた。が、その対向車は信じられないスピード
で走り去っていった。ナンバーを確認する間も無かった。